ラリー北海道優勝者今井様インタビュー

ラリー北海道優勝者今井様インタビュー

まだまだやれる ~最速ドクターに伺うラリーに参戦する理由~

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ラリー北海道とウルト

2021年9月11日から12日にかけて実施されたラリー北海道2021。2020年は新型コロナウイルスの影響で無観客開催となってしまいましたが、 2021年は初開催から20回目の記念大会ということで当初は有観客での開催を予定していたものの、全国的な感染状況を考慮し最終的には2020年同様、無観客開催の運びとなりました。しかしながら、2021年も各地でイベントの中止が相次ぐ中、無事開催の運びとなったことは各自治体を含め、運営に関わられた皆さまの尽力であることは疑いようがないところでしょう。

ウルトジャパン(以下、ウルト)では2021年も引き続きオフィシャルスポンサーとして参画し、選手・チームの皆さまにドライバーズキット(特設サイトで販売中)の配布やサービスパークでの製品紹介・販売など、感染対策を実施しつつ可能な範囲でのサポートを実施致しました。また入賞された選手の皆さまには目録の贈呈があり、その中でもインターナショナルクラス優勝の今井聡選手(以下、今井選手)には弊社でも人気のあるツールワゴンをお送りさせて頂くとともに、インタビューの機会も頂きました。

アマチュアの中の“プロ”

今井選手がラリー競技に参戦したのは約24年前。ご本人曰く「もともと峠を走ったりしていたので、その延長線上という形で」とお話しされていましたが、2008年には東日本ラリー選手権でチャンピオンを獲得され、2009年からは舞台を全日本選手権に移し数々の上位入賞を果たすなど、本業の医師である傍らプロレベルの実力で数々の大会に参戦されてきました。

ラリー北海道には2007年から参戦され、その後は国内初の世界選手権となったラリージャパンに参戦されるなど、2018年と2019年の2年間を除いては毎年参戦されているとのことです。

2021年は今井選手と同様にベテラン勢同士の争いとなったインターナショナルクラスに参戦し、2位に2分以上の差をつけての優勝となりました。そして、その勝因はさすが長年参戦しているドライバーというものがあり「個人的なタイムとしては例年よりちょっと速いかなというもので、特段タイムが速かったりなど、大きく変わった訳ではなかったです。ただ今年は海外の速い選手たちが全くいないところで、全日本クラスに出た上位選手を除いた中では、いいタイムが出たんじゃないかなと思っています」とのことで、コンディションに関しても「これまで参戦していた経験からすると、想定される範囲内のコンディションだったと思います」と分析されていました。しかしながら、先にあった“全日本クラスに出た上位選手”とは新井選手・勝田選手・奴田原選手・鎌田選手など、全日本ラリー選手権で常に優勝を争うドライバーたちで、今井選手が日頃から同じフィールドでタイムを争っていることは、多少の事情通であればその実力に一目を置くことは間違いないでしょう。

これまで全日本ラリー選手権に全戦出場された経験もあり、2021年も残りのイベント数戦に参戦する予定の今井選手ですが「全日本の上位には全くと言っていいほど通用しないので、そこに今後ちょっとでも食い込めればなと思ってますけどね。壁は厚いです」と現状を把握されていました。そこにはモータースポーツ特有の悩みもあり「運転技術の差は歴然とあるんですけど、それに合わせて車もやっぱりだいぶ差はあるんだろうなと。今僕の乗ってるのは三菱のランサーエボリューションⅩですけど、流石に車齢が古くなってきていて、何か車両の変更を考えなければいけなくなってきたのかなと思いますね。ただやっぱり次の車両ってなるとバジェットとか予算の部分でもだいぶ必要なので、やろうかって簡単には言えない金額になってきますよね」ともお話しされていました。

現在日本でのラリー参戦はグループNという規格での参戦が主流ですが、世界的にはグループRというものに移行してきており、また車両自体も年々高額になっている傾向にあるそうです。

ラリーと医師

そういった中でも興味深いのが「今のラリー界、僕たちの車のクラスでやってる人って結構医者が多いですよね。今回のラリー北海道でも走っていたインプレッサ2台は医者だっだりとか」と今井選手含めタフな医師の方々がいることです。今井選手自身「自分はそんな忙しくないから(笑)」と謙遜されていましたが、実際には我々が想像する以上の領域で本業との両立をされていることは容易に察しがつきました。

個人的には先にあった勝因分析はいささか「冷静過ぎはしないか?」と感じた部分もありましたが、“当たり前の治療を正確に、素早く”、そして“どのような状況でも経験に基づくベストな施術”が習慣化している医師という職業柄が垣間見え、またラリーという競技の特殊性(一般公道や未舗装路など2度と同じ状況がない)が“患者の診察から素早い施術”という状況把握の一連の動作に共通点があるように思いました。もしかすると、医師の方々がラリーに参戦するのは必然なのかもしれません。

若者が勝てるとは限らない

インタビューも終盤に差し掛かり、今後に向けたお話しでは「今回は車のセットアップが凄く上手く行っていて、もうちょっとタイムを削れる場所っていうのがはっきりわかったラリーだったので次に繋げたいなと思っています。どこを削ればタイムが早くなるかって通常は難しいんですが、今回ちょっとそれが掴みかけてる気がするので。まだまだやれるなって思います」とさらなる改善点とタイムアップが現実的な形となっていました。

さらに続けて「実は鎌田さん以外、僕より全員年上ですからね。新井選手は僕より6個上だし奴田原選手も年上で勝田さんは1、2個上です。だからまだまだ諦めるにはちょっと早いなと思ってしまったりしています」と第一線で活躍しているベテランドライバーでさえこの向上心かと思うと、論語にある孔子の言葉“三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を知る、六十にして・・・”が間違いではないことを、このお話しを聞きながら心の中で感じていました。そして、「だから、なかなか若者は敵わないですよね。それが本当に面白いところです」。年齢や性別は関係ない、必要なのは飽くなき向上心と分析だ、とモータースポーツの神髄をご自身で体感されている最速ドクターの今井選手のお言葉でした。今回はありがとうございました。